はみだしっ子を発達障害の視点で再読する 7

「窓のとおく」

 

 

 

エルバージュ奪還後、フーちゃんの別荘に皆で転がりこんでいたが、また住み込みのバイトをすることに。まあ、子どもなのによく働くシーンがある。自由を獲得するための労働なんだが。

 

今回のバイト先はシーワールド。犬がきっかけで知り合ったダニーの父親が、ここの出入り業者で、バイトを紹介してもらい、住まいもダニーの家でに厄介になることになる。

家族は両親とダニー、そして家にはあまり寄りつかない兄カール。いつもやけに目立つ派手な服を着ている。

兄と父との関係はこじれていて、もうどうやってコミュニケーションをとっていいのかわからない状態。その結果、家族での話題はもっぱら飼い犬のロジャーのことばかり。

 

そしてある日、とある爆弾事件の現場で、兄のカールの普段着ている派手な服の目撃情報があったということで警察に連行されてしまう。カールは容疑を否定しなかった。その様子を見て、犯人ではないのではと思った警察はカールを釈放する。その後、自宅に戻ったカールの暴れっぷりが凄い。

父親は若い頃、夢見がちな青年だったが、成功者になることはできず、その行動を後悔し続けていた。そして息子には同じ失敗をさせまいと、父の言いつけを守って軽はずみな事をしなければ大丈夫だと、小さい頃からずっと言い聞かせ続けられてきたのだ。

だがカールは成長するにつれ、父親に反発するようになった。だかそれでも父は何かしらの理由をつけてカールを誉める。きっと息子が自分が失敗したことを帳消しにしてくれる存在だったのだろう。

父親がカールの自慢を吹聴して回るたびに彼は傷つき、わざと悪いことをしたり、派手な服装で出歩くようになったりするようになったのだ。

カールは本来は真面目な子で、派手な洋服は父親への当てつけの為に、知り合いから借りていたもので事件には関係なかった。

若い頃読んだ時には、当然子ども側の視点で読んでいて、親が手駒のように自分の事を話す事に私自身、不快感を感じた事があったので、とても共感して読んだ記憶があったのだが。

親になった今読むと、とても複雑な気持ちになった。カールの母が叫んだ言葉。「自分の弱さやもろさは、認めてもらいたがるのに、どうして親の弱さは許してくれないの?」と。

子どもが生まれた時から、親は無意識に子どもの将来を夢見てしまう。幸せになって欲しいから、自分の経験を子供の人生の中で活かそうとするのだろうが・・・・やりすぎると、子供の人生を侵食し、ひどい場合は寄生するようになる。

そうなっちゃったら、子供が暴れるのは当然だと思う。

 

【キーワード】

親から子供へ伝えること、伝わること

親の夢を背負わされる子供

親は子供に対して、相対的評価になりがち。

子供を客観的に見ることの難しさ。

 

「バイバイ行進曲」

 

グレアムのあの暴力父が、病で倒れた事を知り、自らの意思で家に戻るグレアム。父親は何事もなかったような口ぶりで「よく帰ってきた」と言う。グレアムは、殺したいと思っていた父親が弱っていく様を見て、戸惑い、怒りなどの感情が入り乱れる。

父親の病気は、書かれてはいないが多分がんで、在宅での終末医療の様子が描かれている。いとこのエイダは、自分が母親とケンカしたまま別れてしまった後悔から、亡くなる前に父親と仲直りをするようにと言うが、グレアムは当然受け入れる事などできない。父親は母親が出奔した日、花瓶が割れていたのはお前が割ったんだろうと。でも、グレアムは割っていなかった。

父親、グレアム、エイダ、同じ場所にいて、起こった事も同じ筈なのに、それぞれ記憶が違ったり、心にひっかかっていることも違う。人は何に重きをおくかによって、見え方が変わってしまうのかもしれない。

父親は死ぬ前に、和解したがっていた。周囲の人間は、事実はどうあれグレアムに和解を説得するが、最後までそのままで看取ることになる。

父親が亡くなった後、グレアムは睡眠薬を盛られ、父親の角膜の移植手術をする。父親の遺言だった。

 

【キーワード】

血の繋がりって、やーね・・・でも嫌でも似ちゃうとこある。

終末医療のジレンマ。生命維持か、緩和ケアか。

人の記憶の曖昧さ。

 

 

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