はみだしっ子を発達障害の視点で再読する 8

「カッコーの鳴く森」

 

暑い夏。4人は、3週間の教会主催のキャンプに参加することになった。行きのバスの中、サーニンにくっついてきた鳥さんが暴れた時、女の子が突然大声で叫び、パニックを起こした。それがマーシアだった。

教会主催のキャンプなので、聖書の勉強会があるのだが、当然4人はすっぽかして各々キャンプを堪能。そして、森の中でサーニンは、偶然マーシアに逢う。マーシアは木陰でただ座っていて、表情はない。 サーニンは、バスでのことを謝るが、マーシアはなんの反応もしない。でも今回は鳥を怖がらなかったマーシアの見て、彼女になんとなく好意をもってしまう。

次の日から、毎日サーニンはこっそりマーシアに逢いに行くようになるが、マーシアは言葉は話さないので名前もわからず。サーニンは、彼女の事を「クークー」(かっこう鳥)と呼ぶようになる。

マーシアはそばにいるサーニンに振り向きもしないで、座ったまま右手をまっすぐ前に伸ばして、人差し指指を突き立てて、ぐるぐると回し続ける。サーニンは疲れるだろうと、自分が代わりに腕を回してあげたりするが、サーニンの言葉に振り向くことは一切なかった。

暑い日だからと、サーニンはジュース持参。目の前に置いても、全く飲もうとしない。心配になったサーニンが、口元までジュースを持っていったら、驚くほどの勢いでゴクゴクと飲みほした。こうやって、サーニンは慎重に関わりなから、彼女との付き合い方のコツを理解するようになっていく。

だが、サーニンがマーシアと逢っていることがバレてしまう。実はマーシアは、キャンプの主催者の牧師の娘だった。本来ならば彼女は施設に預ける予定だったのだが、断られてしまい仕方なくキャンプに連れてきていた。そして日中は牧師の仕事があるため、森の中にマーシアを放置していたのだ。牧師は「あの娘は人と交わることができないので、放っておいてもらうことが親切」だと言い、今後はマーシアには関わるなと言う。

しかし、ある日サーニンは、にわか雨が降ってきたので、マーシアが雨に濡れないように連れ帰ってしまう。丁度その時、牧師は不在だったので、ふたりは皆と同じ場所で食事をすることに。普段なら集団の中では食事が取れなかったマーシアだが、サーニンが耳をふさいでやったら、食事をとることができ、そのことをマーシアの普段をよく知ってる皆は驚く。が、そこに戻ってきた牧師は、マーシアを引き離してしまう。

牧師の行動の意図を、グレアムとアンジーはいつもの探偵モードで探りを入れると、牧師は過去に自分の恋人を他の男に取られたことがあり、マーシアはその恋人の娘だったのだ。以前恋人を取られたように、また誰かに取られる(負ける)事は、牧師にとって到底認められる現実ではなかった。

だがサーニンと日々関わっていく中で、マーシアの中で確実にサーニンの存在が大きくなってきて、サーニンが危険な状態に陥った時、助けようとして思わずサーニンの名前を叫んだ。そしてその後、サーニンを方向に振り返り、笑ったのだ。

それを見た牧師は、キャンプ終了後、すぐさまマーシアをどこかの施設に預けてしまい、施設の場所は誰にも知らせる事はしなかった。サーニンは、彼女に逢う手だてを失ってしまう。

*****************************************************************

はみだしっこを再読するきっかけになった話に、やっとたどり着けました♪

やはりマーシアは、典型的なカナータイプの自閉症だと思います。

指をぐるぐる回す常同行動。耳ふさぎの聴覚過敏。言語の喪失あり。ところどころに、マーシアの生育歴のエピソードが描かれています。

1歳の誕生日前、両親が近隣の人が心配で様子を見に行くほどの大ゲンカをしていたが、マーシアは無反応で座っていたのだと。動けなかったのは、支持待ち傾向のせいかも?

 

この話のwikiの説明によると、冷蔵庫マザーの話なのでは?という視点がありました。

マーシアの症状を聞いたアンジーが話しだしたのが、ナチスの収容所いた人たちの異常な思考回路の話。殺される恐怖から逃れるために、自分の存在を消去する。サーニン自身も、父親に地下室に閉じ込められて、記憶がうつろな状態を経験しているため、マーシアと共鳴しあっているのではないか?とアンジーは心配する。

この話が入ってる単行本の初版は、1979年の3月になっています。自閉症が脳障害であると言われるようになるずっと前の話です。はっきり原因不明とも書かれています。

そして母親の描写として「マーシアの母親は、忙しくてかまってやらず、不器用な人てで上手にかまってやれず、いつもイライラしてマーシアに言っていた。私は、悪い母親なんだよ。いつの日にか、罰せられバリバリと喰われてしまうわ」と。

私も冷蔵庫マザー説じゃないかと思います。

 

しかし逆に、今から30年以上の話なのに、自閉症の対処法がところどころに、見事に描かれているのに驚かされます。サーニンがマーシアどうやって関わったか。

 

本人が嫌がることは絶対にしない。とにかく根気よく待つ姿勢。

相手のテリトリー内の遊びに付き合う。

伝えるときには、明確に伝える

→場所を移動する時、どこに向かうか明確に説明して、手を出し誘いやがった(笑)

パニックを起こした時、冷静に大丈夫、怖くないと伝え続ける。

・・・いやはや、見事としか言いようがない。

これは個人的には自閉症対応の王道じゃないかと思います。この時代にこういう関わり方をしていた人が、おられたのだと思うと凄いことだと思います。

 

三原先生はもうおられないので、事実確認はできませんが、先生は間違いなく、自閉症児を実際に見ていると思います。直接かビデオかはわかりませんが。資料だけで、あの絵を描いたとは到底思えません。もしかすると、マーシアにはモデルがいるかも。

 

そしてこの物語にも、当然親の話題が入っています。昔捨てられた恋人の娘を引き取る牧師。今回読み返して感じたことは、マーシアの父親が牧師という点が、社会の中での、障害者の存在を明確に浮き彫りにしてるのかもしれないと。

アンジーが、牧師にキツイ言葉を投げかける

「そんなにマーシアを独占することはないでしょう。別に牧師様専用の・・神様がよこした試みの象徴としているんじゃないでしょう?」

親から捨てられた子どもですら慈しむことは、聖職者として当然の行動。愛すること、奉仕することを課せられてる聖職者だから、マーシアを守らなければならないと。

そのくせ、森の中に放置したり、他人の目に触れさせないようにしたり・・

そして他の誰かに取られそうになると、マーシアを愛していると言いながら、施設に丸投げする。自分のプライドを守るために必死なのは、一般人も聖職者も同じなんだろうとなと。

 

【キーワード】

自閉症

子供を理解できない母親の苦悩(冷蔵庫マザー)

社会の中での障害者

聖職者としての無償の愛

聖人君子であることを課せられる苦悩

敗北感から脱却できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三原順wiki

 

はみだしっこwiki