次の世代に繋げていく(40年ぶりにマルサリスを見て感じたこと)

ウィントン・マルサリスのライブに行ってきました。私は約40年前に、アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズのメンバーとして兄弟で来日した彼を見た事があります。


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その時のマルサリス兄弟は既にとんでもない新人が現れたと騒ぎになってはいましたが、ジャズ・メッセンジャーズのメンバーとしての演奏だったので、お行儀がよかった印象でした。演奏は素晴らしかった記憶ですが、何しろあのカミナリオヤジのようなアート・ブレイキーが仕切ってましたから(笑)

 

あれ以降、諸々忙しい人生を過ごしていたので(他記事参照)ライブに出かけるという事もとても少なかったので、今回のライブはとても楽しみでした。

 

本当に素晴らしかったです。

彼はデビュー当時から既にとんでもなくうまかったので、新しいマイルスと称されていたのですが。

だから今はどんな難解な事とかやってるのかなと不安はあったのですが。でも全くそんな事はなく、正真正銘の王道のジャズでした。

そして相変わらずの正確無比な演奏。

えげつなかったです。

 

私はライブに行くとき、予習をせずに行くので、大抵のほぼ曲は知らなかったりするのですが、その中でよく知ってる曲がひとつありました。

Goodbyeという曲です。

私が初めにこの曲を知ったのは、テレビで放送していたベニー・グッドマン物語です。

確か父親の訃報を聞いたシーンで使われていました。多分小学生だったのですが、この曲はとても好きで自分でもよく弾いていました。

 

年齢を経て人生も一段落ついた今、大好きだった曲をマルサリスが生で演奏してる。

しかもアシストは小曽根真

本当にとんでもなく素晴らしくて。

神様から「今までよく頑張ったね」と、プレゼントを貰ったような気分になり……

 

まあ実際には、ただの偶然ですが。

後から調べたらGoodbyeはマルサリスがよく演奏する曲だったようで、それを単に私が知らなかっただけなので。

ただエンタメには、こういう巡り合わせというのがよく起こる。そのタイミングで聞くと、とんでもなく響いてしまう。

本当に素晴らしい時間でした。

 

その後気分が高揚したまま、ライブの帰り道、ふと気づきました。

白人の曲を黒人が演奏してたんだなと。

私の子どもの頃には、まだ黒人への差別がいたるとこにの残っていて、音楽も白人黒人で語られる事がよくあったのを記憶しています。

 

でも今はそんな話はほぼ聞かなくなり。

もう人種では語れない様々なアーティストが登場していて、音楽はもう完全にボーダーレス化してるんだなと。

 

そして、アート・ブレイキーの前でお行儀が良かったマルサリスが、今度は後輩達を制したり引っ張ったりして演奏してる事も感慨深くて。

自分が先輩に与えられたものは、後に続く人に返していく。これが全ての社会でできれば、世の中本当によくなるのにねぇ。

私もそうありたい……